SIMロックの原則廃止により生じる問題点と知っておきたい対策

スマホ

2021年10月1日よりキャリアから新発売されるスマホ端末は、SIMロックの解除を行ったものになります。

iPhone13は9月の後半の販売開始ですが、SIMロックの原則禁止スタートを待たずにSIMロック禁止の端末として販売されました。各キャリアで販売されているiPhone13は、Apple storeで販売されている端末同様です。

日本においては、SIMロックフリーの端末をキャリアが扱うのは大きな変換点です。

原則的にキャリアで購入した端末も、何も手を施さないでdocomoやau、SoftBankのSIMを挿入して利用できるようになります。

ところが、「原則的に」と、前置きを置いたのは、実際にはそのような利用方法には現在ではいくつか問題点があります。

そこで現在の状況においてキャリアからSIMロックフリーの端末を購入する場合、私たちが知っておかなくてはいけない問題点があります。

その問題点をお話します。

SIMロックフリーの端末なのに、キャリアをまたいで使えないあるいは支障をきたす理由

SIMロックフリーの端末をキャリアから購入したのに、キャリアをまたいですぐに使えない問題点とは次の内容です。

端末購入には回線の契約等が必要

docomo、au、SoftBankの3大キャリアは、iPhone・Android端末において扱うスマホ端末すべてにおいて機種のみの販売は行っていません。
全ての端末の販売においては、機種変更、MNP(乗り換え(サブブランドを含む))、新規契約のいずれかが条件になります。

唯一、楽天モバイルのみが端末のみの販売と、回線契約を付帯する場合とに分けて取り扱いをしています。
楽天モバイルはキャリアになった当初からSIMロックが掛かっていない端末を扱っていました。今年に入りiPhoneを取り扱う様になっても、SIMロックフリーの端末を扱っていました。

このような回線契約を伴わせる状態でSIMロックフリー端末を販売しているようでは、今までSIMロックが掛かっていた状況と全く同じと言えます。ここが問題点です。

端末の周波数帯・VoLTEの対応問題

2つ目は、周波数帯の問題です。この問題は、Android端末におて適応される問題です。
iPhoneの場合は、前述の通りAppleで販売されている内容と同じなので、すべてのキャリアの周波数帯に対応しています。

周波数帯って何?

周波数とは、1秒間に繰り返される電波の波の数です。その波の括りを周波数帯と言います。

各キャリアは、総務省から独自に割り当てられた周波数帯を持っています。そしてその周波数帯に合わせた端末機種を製造し、販売を行っています。

例えば、docomoで購入したスマホ端末はdocomoの周波数帯に、au端末はauの周波数帯に、SoftBankはSoftBankの端末と周波数帯に適した形になっています。その結果、快適に利用できるのです。

各キャリアの4Gと5Gの周波数帯です。

4G周波数帯
docomoB1B3B19B21B28B42 
auB1B3B11B18(B26)B28B41B42
SoftBankB1B3B8B11B28B41B42
楽天モバイル B3 B18(B26)   
5G周波数帯
docomo n78n79n257
aun77n78 n257
SoftBankn77  n257
楽天モバイルn77  n257

キャリアと端末に設定のプラチナバンドの違いが問題

4Gのネットワークは、わが国では主流となっています。そこで周波数帯における問題点を、4Gネットワークを基にして追及します。

表4G周波数帯のB1においては、日本をはじめ海外でも用いられている主要周波数帯です。残念ながら楽天モバイルには割り当てられていませんが必要なバンドです。この部分は、特に問題ありません。

問題なのは、票の黄色い部分で示したバンドです。これらは、プラチナバンドと呼ばれるものです。

このプラチナバンドは、周波数帯が低いため通信速度は遅くなります。しかし重要な周波数帯です。
特徴は、広い範囲をカバーすることが出来、障害物を通り抜けたり、回り込んだりすることが可能です。そのため山間部やビルの陰や地下街あるいは地方の高速移動中などでも電波がつながるようになります。
要するにB1の周波数帯の届かない部分を補うような形になります。そのため、わが国のほとんどの地域では、プラチナバンドの利用が主流になり、欠かすことのできない周波数帯です。

しかしプラチナバンドは、各キャリアによって統一されてはいません。各社ばらばらの状態です。その結果SIMロックフリーになったとしても勃発する問題は、繋がらないということです。

例えばあなたはdocomoのAndroid端末を入手したとします。しかし回線契約はSoftBank回線とします。docomo版のSIMロックフリー端末ですから起動し、ごく限られたB1・B3の周波数帯範囲では使用できます。

しかし、B1・B3が繋がらなくなった場所では、全く通信が出来なくなります。地下街や大都会のビルの谷間、移動中の新幹線の中、あるいは地方などで繋がらなくなります。

この状況は、docomoのAndroid端末に設定されているプラチナバンドのB19と、SoftBank回線が提供しているプラチナバンドB8の違いによるものです。

SIMロックが廃止されたとしても、購入した端末と提供しているキャリアとのプラチナバンドの周波数帯の違いが発生すれば、実際利用することは不可能に近いです。

VoLTEの違いにより通話品質が低下する

VoLTEとは、LTEもしくは4G回線を利用した音声通話サービスです。こちらも問題になるのはAndroid端末です。iPhoneにおいては問題ありません。

VoLTEの特徴

VoLTEの特徴は、データー通信中の画面のまま着信を受けることが出来たり、通話相手と画面の共有が可能となったりします。最大の特徴は、通話相あ手の声がよりクリアな状態で聞こえます。
また、発信までの時間が短縮されるというメリットもあります。

私たちが日常において特に意識しないで利用しているサービスですね。

VoLTEの問題点

VoLTEの仕様は、docomo、au、SoftBank、楽天モバイルと、それぞれのVoLTE仕様があります。

各社が販売する端末においては、各社のVoLTEが使用されています。この端末のVoLTEの使用が、他のキャリアの通信SIMを利用とした場合、十分な働きをしない場合があります。

現在あなたが通話の時に相手の声がクリアに聞こえるとすると、このVoLTE機能が働いていることになります。
仮に、VoLTE機能が働いていないと3G回線の接続となり、通話品質はVoLTEの時よりも数段落ちます。

また、通信中に電話が掛かってきてもわからず、また画面の共有も不可能になります。

キャリアが改善に踏み込まない理由

SIMロックの解除が行われるとしても上記のような問題が生じるようであれば、SIMロック解除を行う意味がありません。

では、これらの問題は改善されるのでしょうか。結論から言うと、簡単には改善されないでしょう。

理由は、各キャリアとも最も懸念しているのが、顧客の流出です。

e-SIMがやっとahamo、povo、LINEMO、で利用できるようになりました。しかしそれまでは、セキュリティー上の問題等などを理由に(実際にはセキュリティーの問題も存在する)、各キャリアはe-SIMの導入をしませんでした。
しかし本当の理由は、e-SIMの導入により顧客が簡単に回線契約を乗り換えることを恐れていたからです。

そして今回はe-SIMの導入に続き、SIMロック廃止です。

SIMロックの役割は、顧客の持つ端末を自社のサービスのみに対応させ、他社のサービスを簡単に利用できないようにすることです。この役割を果たす主軸のシステム(SIMロック)がなくなった現在、キャリアは顧客が他社に流れないようにより懸命に牙城を守る必要があります。

その手段として、先ほど挙げた問題点の改善には簡単に着手できないのです。

  1. 単体販売を行わないで回線契約と抱き合わせにすして販売する。
  2. 自社の周波数帯のみに対応し、他社の周波数帯には不対応とする。

と、いう内容の対応策です。

端末の単体販売においては政府等から改善要求が示される可能性は大きいですが、周波数帯における他社への対応は、それほど簡単にはいかないでしょう。

理由は、周波数帯の他社への対応においては、各キャリアの最後の砦になるからです。

現状はとどうなっているのか まとめ

2021年10月現在では、前述したように10月以降にデビューする新端末がSIMロックフリーの状態で販売されます。

9月以降に販売開始された端末機種は、10月に入って購入されたとしてもSIMロックフリーにはなりません。

しかし、9月以降の販売端末がすべてSIMロックが掛かっているとは限りません。

同じキャリアでも楽天モバイルの販売する端末は、楽天モバイルがキャリアになった当初からSIMロックフリーです。楽天モバイルの自社端末もSIMロックフリーです。(私が使用しているRakuten BIG もSIMフリーです。)
一方、MVNOの扱っている端末もほとんどがSIMロックフリーです。

楽天モバイル・MVNOの販売しているSIMロックフリーの端末は、しっかりと対応周波数帯を確認してから購入してください。例えば、「docomo、au、のプラチナバンドには対応しているが、SoftBankのプラチナバンドには未対応」と、いうことがあります。
対応周波数帯の詳細は、各製造メーカーのWebページで確認できます。

またMVNOの場合は3キャリアと同じように回線契約を同時に伴う販売がほとんどです。楽天モバイルにおいては、Web申し込み時においても製品のみの購入か、回線契約を伴う購入なのかを選択することが出来ます。

キャリアからの端末販売がSIMロックフリーとなった現在は、端末の購入先をしっかりと考え自分の使用に合った端末を選ぶ必要があります。

機種変更をするときなどは、周波数帯とVoLTEの対応状況だけは調べておく必要がありますね。