2020年8月に総務省からオンラインでMNP(番号持ち出し制度)の手続きを行うと、無料で番号を変えずに携帯電話会社の乗り換えができる方針を明らかにしました。店頭でMNPを行うと有料となり税込で1,100円の手数料が掛かるとしています。
コロナ禍の時代に仕事や家庭でのあり方の変化が生じた時代に、オンラインでいつでもどこでも手続きが可能になることを含め、海外よりもMNPのあり方が一般的に広がりにくい日本で、いかにモバイル市場の活性化を図ろうとしているのかが良く見える案件です。
しかし、当初は総務省の発表では今年中にも実施されるような勢いで話が飛び出しました。しかしマスコミの報道も当初のみ行われただけで、後続になるニュースはありません。
私個人としてはMNPの無料化には非常に期待しているのですが、あなたはどうお考えですか。私の感じるところでは、多くの方がMNP無料化においては、それほど関心は少ないように感じます。いや、多少の関心はあるのですが、いろいろな理由から現実的なものとしてとらえていない方も多いのではないでしょうか。
では、なぜMNPの手続きにおいて前向きに取り込めないのでしょうか。そのあたりの実情を考えてみます。
尚、解約金などの非課税金を除いた料金の表示においては、税別料金の表示となります。
ユーザーがMNPを踏み留まる理由
MNPの実施があまり行われない理由として政府などから挙げられている理由が、MNP手続きの煩雑さです。
そして、その手数料金の3,000円が生じることが理由になります。
確かに3,000円のMNPの手数料金は大きな損失になります。その上転入先の事務手数料金としてまた3,000円の出費もあり、合計6,000円の出費になります。
手続きの煩雑さと出費の6,000円を考えると、MNPの実施を見送る方も多いのではないでしょうか。
そしてそこに輪をかけて、解約金が生じる可能性があります。現在MNPが滞る大きな理由の一つにもなります。
まだ解約金の9,500円が生きている
2019年10月1日より、スマホ利用の契約期間中における解約において、解約金の撤廃および減額が行われました。
大手キャリアの場合、2年間の定期契約の実施の有無の差が月額料金において170円の差となり、定期契約期間中の解約の場合は解約金の最大金額が1,000円となりました。
MVNOにおいては、契約後の1年間強制利用のルールがなくなり、1年以内の契約解除においてもほとんどのMVNOが解約金を0円にしています。
しかし、この新しいシステムは、2020年10月以降に契約した場合にのみ適応されます。
2020年9月以前に契約のキャリアの場合、従来の2年ごとに訪れる契約解除可能期間にMNPを行わないと、を例外の期間では9,500円の解約金が発生するシステムになっています。
解約月の問題
2020年10月現在でも多くの方が解約金の縛りを受けている状況になります。
キャリアの解約月間はスタート月から3か月間です。
この解約月の規定を踏まえると、例えば2019年6月の解約月スタートの場合、2019年9月末までが解約月間になります。
仮に6月が解約月のスタートとしてあなたが現在利用しているキャリアを乗り換えようと考えた場合、キャリア間の乗り換えかMVNOへの移行としても、あなたは遅くても9月中にいずれかに乗り換える必要があります。
しかし、2019年9月の段階では、キャリアに乗り換えた場合また新たに95,000円の解約金に2年間縛られることになります。MVNOにおいても1年間の最低利用期間が生じます。(理由は、解約金95,000円の撤廃は2019年10月以降の契約のため)このような状況で(95,000円の解約金を支払って)あなたは、改めてわざわざ他のキャリアやMVNOに乗り換えますか。
多くの方が95,000円を払ってでも現在利用しているキャリアから、わざわざ乗り換えようとすることはないでしょう。
従って2017年6月から2019年6月までに解約月を迎える方は、もう2年間現在のキャリアと契約する可能性が非常に高いということです。
この状況もMNPを促進させるための弊害になります。
解約月をうっかり忘れてしまう
その他の弊害として挙げられるのは、解約期間のスルーです。
「あなたは、解約月を把握していますか?」と、言うことです。たかが2年間ですがこの年月の間に次回の解約月を忘れてしまい、気が付くと解約月は先月や先々月までだったというようなことはよくある話です。
キャリアも、解約月が近づく前に顧客に対して解約月が来ることを通知することがあっても良いかもしれませんが、現在のところはそのようなサービスはありません。
逆に、MNPなどを行おうものなら、必死になって必要以上に引き止めに合うのが現状です。
キャリアも自分のところから顧客をわざわざ逃がしてしまうようなサービスを展開するつもりは全く無いでしょう。
私たちが解約月に対して少し執念を持って接しないと、解約月をいつの間にか通り越して「また2年後にお会いいましょう」と、いうことになりかねません。
MNPの手続きも原因とされている
MNPの実施が一般に行われにくい理由は、MNPの手続きにあるとされています。
現在のところMNPの番号取得の方法は、電話やインターネット、そして実店舗にてMNPの手続きを行います。
しかし、インタネットでのMNP番号取得は、自ら行う必要があります。実店舗にてMNPの番号を取得する場合、必要以上の引き止めにあう可能性が最も高くなります。
せいぜい電話でMNP番号を取得するのが、最も最善でしょう。多少の引き止めはありますが、実店舗よりは弱いです。また、引き止めが行われない場合もあります。
MNPに必要な16桁の番号を、電話口で口頭で告げられることが多いため、番号を間違わずに控える必要があります。
このように、MNPに慣れていないと番号取得にあたふたしてしまうことも多くあります。少し怖いと感じるかもしれませんね。
そのため「そこまでする必要があるなら、別にMNPを利用してスマホの業者を乗り換えなくてもいいや」と、なる方も多くいらっしゃるでしょう。
このMNP番号の取得のわずらわしさをなくすため、MNPの転出元に転入先の登録まですべて行わせるという提案があったそうです。転出元となる可能性があるキャリアなどは大反対がありました。そのため、その案件は没になったそうです。
しかし、転入先の通信会社がMNPの番号取得から、自分達の元への転入手続きまで代行として行えば問題ないのかもしれないですね。なぜなら、わざわざ自分のところを指名して顧客がやって来るのですから、こんなに美味しい話はないですよね。
また私たちも手続き事務手数料として3,000円を聴取されているのですから、そのようなサービスがあったら嬉しいですよね。
MNPが手数料0円でも広がりにくい理由 まとめ
MNPによる通信会社間の乗り換えが普及しずらい理由についてまとめてみました。
- 95,000円の解約金がすべて撤廃されたわけではない。多くは残っている。
- キャリアの解約月間を忘れてしまう。
- MNP番号の取得から乗り換え先の手続きまでの煩わしさ。特にMNP番号取得における煩わしさや引き止めなど。
いくらMNPの番号取得の手続きが0円で行われるとしても、解約金を支払ってまでMNPによる乗り換えを行おうとする方はごく少数でしょう。
解約月が来たら乗り換えるかと考えていても、実際に解約月が来たときはMNPのことや乗り換えのことを忘れてしまっている。
そして解約月を覚えていてMNPの転出番号の取得をいざ行おうとしても、引き止めやメンドクさや煩わしさで結局MNPの乗り換えを諦めてしまったということが現実になります。
このような現状が私たちのあり方なのかもしれません。これでは、MNPを利用してより安い通信会社に乗り換えるという現状はまだまだ遠い未来なのでしょうか。